独自の「キャリア面談」と「キャリアデザイン研修」、「部下育成支援」で若手の離職削減

    自社のホワイト化に取り組んだ理由・狙いについて教えてください。

    当社は、お客様にIT技術を提供するシステムインテグレーターです。「エンジニアとお客様を笑顔にする」を会社のビジョンとし、社員の個性・多様化を尊重し、社員一人ひとりの強みを伸ばすことで、組織のパフォーマンスを最大化することを目指しています。

    この考えのもと、社員から「この会社で働き続けたい」と思われる会社を目指し様々な取り組みや制度を設けてきましたが、『若手(20代)社員の早期離職』という大きな問題は根強く残っていました。
    若手社員の中には理想と現実とのギャップに悩んだり、仕事のプレッシャーを一人では乗り越えることが出来ずモチベーションが低下してしまい、エンジニアの道を諦めてしまう社員も。

    この問題に関する課題は大きく2つあり、1つは「若手社員はキャリアパスを自身で描くことが出来ない」、もうひとつは「管理職が部下のキャリアサポートを十分に出来ていない」ということでした。

    そこで、若手社員が困難を乗り越えながらも一人前のエンジニアに成長するためには、日々の不安や迷いを受け止め、仕事経験を振り返ることで成長実感を得ることが出来るように組織的にサポートすることが必要だと考え、キャリアを一緒に考える場を提供するために「キャリア相談室」を社内に立ち上げることにしました。

     

    ホワイト化について具体的な取り組みをご紹介ください。

    社員のキャリアビジョンと当社内の多職種・多業務とのマッチングをはかり、中立的な立場で社員のキャリア実現を支援することーーこれが「キャリア相談室」を設立した目的です。取り組みとしては大きく2つ。1つは若手社員向けの「キャリア面談」と「キャリアデザイン研修」。もうひとつは管理職向けの「部下育成支援」を実施しています。

     

    その施策、取り組みの効果について教えてください。

    2018年度の一番大きな効果としては、若手社員26人の離職リスクを未然に防ぐことが出来たことです。

    「キャリア面談」では、相談者の同意を得た上でキャリアコンサルタントが面談の内容を踏まえて、相談者の上司や所属部門長に働きかけを行います。働きかけは様々で、ジョブローテーションを推進したり、上司との関係性や仕事上の問題を解決したりと多岐にわたります。もしキャリア相談室がなければ、彼らは誰にも相談出来ずにキャリアに悩み、最悪の場合離職につながる可能性もあったかもしれません。

    また、「キャリアデザイン研修」を受講した若手社員にアンケートをとったところ、87%(93人)が「自己理解が深まった」と回答してくれました。また65%以上(60人)は更に自身の強みを活かす行動計画を立てるまでになりました。「今後のビジョンが見えていなかったが、強みを活かしてどのようなキャリアを描いていきたいのかを明確にすることが出来た」「失敗を恐れて一歩踏み出せずにいたが、具体的な行動がイメージ出来るようになった」という声も届いており、若手社員が自分でキャリアを考えて行動に移す力が向上していると感じます。

    管理職にも変化が生まれています。部下との関係性の改善を目的とした管理職向けの研修を開催した結果、管理職の行動が変化し、80%の社員が「上司が自分を尊重して話を聞いてくれるようになった」と答えました。

     

    上記取り組み導入から実施、成果があがるまでに苦労したポイントはありますか?

    出来るだけ導入してからの苦労をしないようにと、「キャリア相談室」の企画段階で、企業内キャリアコンサルティングを提供する部門の立ち上げ方や、どんな問題や失敗が起こるのかを調べました。

    キャリア開発の先進企業3社を訪問してヒアリングをさせて頂いたのですが、その際「キャリアカウンセリングに対して、疑心暗鬼だったりメンタルカウンセリングのイメージが強かったりしたようで、当初は自ら相談に来る社員は少なく浸透させるために苦労した」というお話しを伺いました。
    使ってもらえなくなるくらいであれば……と考え、思い切って「20代社員全員のキャリア相談室での面談を必須」として、社内に浸透させることにしたのです。

    あとは「キャリア相談内容の守秘義務」も明文化し、周知を徹底しました。キャリアの悩みは、時として上司に相談しにくい場合もあります。「査定に影響したらどうしよう」「上司に知られたら仕事がしづらくなる」そんな不安を感じさせないためにキャリア相談室は人事組織から切り離し、守秘義務があることを社員にしっかりと伝えることで、心理的安全性を高めるようにしました。

     

    自社のホワイト化に取り組んだ後、社内・社外から感じられた効果はありますか?

    若手社員の変化を実感しています。もちろんこの変化は若手社員が自己の課題と向き合い行動した結果です。

    「自身で目標を立て、行動したことで成長を実感出来た」「視野が広がり、言われたことだけでなく、仕事全体のゴールを考えて行動出来るようになった」というような声もあります。将来に対して漠然と不安を抱えていた若手社員は、前向きな気持ちに変化し、未来のキャリアに向けて一歩踏み出し始めています。

    また、お客様からも「キャリア相談室」の取組についてぜひ教えてほしいというお声がけもいただきました。中小企業の中で「キャリア相談室」を組織化し、「セルフ・キャリアドック」を導入した当社の事例を多数の人に知ってもらうことで、企業内キャリアコンサルティングを推進していきたいと思っています。

     

    今後の課題・これから先目指す「取り組み」をお教えください。

    今後取り組んでいきたいことのひとつは、「キャリア面談」の適用範囲拡大を実施です。キャリアに悩むのは若手社員だけではありません。ですので2019年からは専門資格を保有するキャリアカウンセラーを増員して、当社の中で一番多い30代の社員に対してもキャリア相談を提供していく予定です。

    もうひとつは「社員の生の声の活用」。キャリア開発を進めるためには、社員個人と環境(管理職・組織等)への両軸のアプローチが必要です。先にお話ししたとおり、本人の了承を得たケースに対しては上司などの関係者に対して働きかけを行っているのですが、組織の仕組みを変えたり新たに作ったりする必要があります。

    現状は相談内容の守秘義務を保つために情報の機密性を高めているので、キャリア面談に寄せられた「社員の生の声」を関係部署に共有していません。情報の機密性を高めた結果、全社施策としての対策が打ちにくいという新たな課題も見つかっています。今後は守秘義務を担保しながらも「社員の生の声」をもとに組織課題を分析し、制度改革に活かしていきたいと考えています。

    当社は、社員のキャリアを一緒に考えながらも、個人と組織の共存を目指すことが重要であると考えています。組織が社員に対して一方的に何かを与え続けていては、本当の意味で自律的な社員には育ちません。
    与えられた環境に依存するのではなく、自分の人生(キャリア)を主体的に考え行動できる社員を育成することこそが、組織の成長を促進するのだと考えています。

    今回の受賞をきっかけに、当社の取組を多数の人に知ってもらうことで多様な社員が安心して働き強みを発揮出来る環境をSIer業界全体に広めていきたいです。

     

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