ホワイト企業になるための3つの要素と8つの取り組みとは?

働きやすい職場かどうかを示す「ホワイト企業」「ブラック企業」という言葉があります。
なんとなく意味は分かるけど、具体的にどのような特長の企業を指すか理解していない方も多く、曖昧に使われている事が多いのではないでしょうか。また、「ホワイト企業に就職したい」と考える求職者が多い中、各企業の人事・労務担当者の中にはどのような取り組みを行うべきか頭を悩ませている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

ここではホワイト企業の定義として、ホワイト企業に必要な3つの要素と7つの取り組み、今後ホワイト企業を目指さなくてはならないワケ、ホワイト企業になる方法などを解説します!

①「ホワイト企業」「ブラック企業」とは?

ホワイト企業とは一般的に社員への待遇面や福利厚生、労働環境が整っており社員の離職率が低い会社であると認識されています。 ブラック企業はその対義語として利用されることが多く、数年前に過労死問題などから多く使われています。

「ブラック企業」、「ホワイト企業」という言葉が生まれたきっかけ

2013年、長時間労働などが原因の過労死・過労自殺が発生し続けていることに対して、国連が日本政府に懸念を示したうえで、是正するようにという勧告を出しました。
同じ年のユーキャン新語・流行語大賞では「ブラック企業」という言葉がノミネートされていることから、この頃から世の中が、働きにくい職場環境を「ブラック企業」と示し、その逆のイメージを「ホワイト企業」と呼ぶようになったことがわかります。

「ブラック企業」と「ホワイト企業」のイメージ

ブラック企業の一般的なイメージとして、
①長時間労働 ②残業代未払い ③離職率が高い
などが挙げられます。

ホワイト企業のイメージを単純にブラック企業の逆のイメージとしてしまうと、
①労働時間が短い ②残業代が支払われている ③平均勤続年数が長い
となってしまい、これらの要素を満たしている企業は確かに良い会社であるかもしれませんが、そのイメージの状態で収益が出せずに倒産してしまうようでは問題があります。
ゆえに、単にこれらの観点のみでホワイト企業と判断するには疑問が沸きます。記事の後半では、ホワイト企業を目指す上で基準となる3つの要素と8つの取り組みを紹介します。

②企業が「ホワイト企業」を目指すべき理由

日本は「少子高齢化に伴う労働力の減少」「介護や育児など働くスタイルの多様化」などの状況に直面しています。
こうした中、IT投資や人工知能の導入などの効率化施策により、長時間労働を禁じることで、労働者の健康面でのリスクを削減することができ、労働生産性を向上させることが可能です。
さらに、多様な働き方が認められれば、労働力不足の解決策にもなります。

このように、従業員が働きがいを高く保ち、能力を存分に発揮できる環境を作ることが、今後重要な課題になっています。
そのような背景があり、2019年4月に働き方改革関連法が施行されました。

企業の今後を長期的に見て、ホワイト企業化を目指していけば、優秀な人材の確保や業績向上にも効果を発揮し、企業にとってプラスの側面も多いのです。

③ホワイト企業の基準となる3つの要素と8つの取り組み

ホワイト企業かどうかを判断する基準として、大きく3つの要素とそれに関連した取り組みが挙げられます。
ホワイト企業を目指すために、以下で紹介する要素をバランス良く実施することが大切です。

要素1:長期にわたって健全な経営を続けられる優れたビジネスを行う企業

現在、日本は長期の人口減少過程に入っており、2048年には人口が1億人を割り、2060年には8674万人になると推測されています。ピーク時の2008年の1億2808万人と比較すると、50年余りで人口が30%以上減少します。人がいないと成り立たないビジネスは、人がいないから営業ができないといったことが当たり前に起こり得るため、少ない労働力で成り立たせるための「ビジネスモデル」と「生産性の向上」を今から確立しておかないと、いざ労働力が減ってから焦っては遅いことになります。

【要素に関連した取り組み】※取り組みについて詳しくは後述します。
■ビジネスモデル
長期ビジョンを従業員と共有し一体感ある組織づくりをおこなっている。
■生産性向上
生産性向上のための画期的な取り組みを行っている。

要素2:従業員が安心して働き続けられるために優れた社内統治を行う企業

社内統治とは、近年、コーポレートガバナンスとも呼ばれており、わかりやすく簡単に言うと「社内の不正を防ぐ仕組みによって長期的な企業価値の増大に向けた企業経営の仕組み」を指します。企業活動において従業員の労働環境を遵守するためには、まず、社内の統治が健全でなければなりません。不正や不祥事の発覚により、企業価値や信頼が失墜する事態を未然に防ぐために欠かせない取り組みであると言えます。

【要素に関連した取り組み】
■リスクマネジメント
経営を行っていく上で障壁となるリスク及び、リスクが及ぼす影響について事前に対策し、危機発生の回避をするとともに、危機発生時の損失を極小化するための取り組みを行っている。
■労働法遵守
従業員が安心して安全に働くことができ企業活動を円滑に行うために、労働に関する法律の内容を正しく理解し遵守している。

要素3:時代のニーズに合わせた従業員の働きがい(エンゲージメント)を高く保つ企業

働きがい(エンゲージメント)と従業員満足度は同じように扱われがちですが、実は違う意味となります。
従業員満足度は、給与や福利厚生といった与えられるモノに対しての満足度を指します。一方、働きがい(エンゲージメント)が高い会社は、会社への愛着や貢献意欲等の信頼関係がベースにあるため、組織に対する自発的な貢献意欲や、主体的に仕事に取り組む意欲が期待できます。
労働人口減少に伴い、新たな人材確保に苦戦する時代において、従業員が働きがい(エンゲージメント)を高く保つ職場を作ることにより、企業利益にも直結し、離職率の低下にも繋がります。

【要素に関連した取り組み】
■ワーク・ライフバランス
全ての従業員のワーク・ライフバランスの実現に向けて就業場所や時間、ライフステージにとらわれないような柔軟な勤務形態を導入することで、キャリア実現を支援している。
■健康経営
従業員の健康を重要な経営資源として捉えて、個人の健康増進を企業の業績向上に繋げるための施策を取り入れている。
■人材育成
働く従業員と企業の関係を対等ととらえ、お互いが同じ方向に向かって成長するための取り組みを行い組織力の強化をしている。
■ダイバーシティ&インクルージョン
全ての従業員がそれぞれの特色/個性/経験等を活かし、活躍できる会社を目指して多様な人材の活躍支援をおこなっている。

④ホワイト企業になるために必要な8つの取り組み

日本では2019年4月に働き方改革関連法が施行されました。しかしながら、2019年12月時点では企業の60.4%※が働き方改革への取り組みを実施している一方で、中小企業では「資金力、余剰人員の問題、何から始めたらいいかわからない」といった課題を抱え、企業規模により取り組みの差が生じています。
※2019年12月 帝国データバンク「働き方改革に対する企業の意識調査」より
最後に、先ほど紹介した3つの要素に関連する具体的な8つの項目の具体的な取り組みを解説します。

1_ビジネスモデル
長期ビジョンを従業員と共有し一体感ある組織づくりをおこなっている。

【取り組み具体例】
自社の利益を追求する中で、持続可能な開発目標(SDGs)を達成できるビジネスを実施している
1ヵ年以上の次の項目を含む中期経営計画を作成し、全従業員へ周知している
(自社の対象となる業界の市場性が記載されている、明確なターゲット設定や顧客認識がされている、自社の提供する商品・サービスが定義されている、数値計画が示されている 等)
2_生産性向上
生産性向上のための画期的な取り組みを行っている。

【取り組み具体例】
□定型業務について、業務フロー・プロセスを整備したマニュアルが存在する
□労働時間の管理だけではなく、業務実施時間の把握または管理をしている
3_ワーク・ライフバランス
全ての従業員のワーク・ライフバランスの実現に向けて就業場所や時間、ライフステージにとらわれないような柔軟な勤務形態を導入することで、キャリア実現を支援する取り組みです。

【取り組み具体例】
□ワーク・ライフバランスに関する取り組みの方針資料(コーポレートサイトでの発表も可)を作成し社内外に発信している
 (取り組んでいる目的、目標 、計画 、実施内容)
□ワーク・ライフバランスの取り組みについて、管理職の人事評価へ反映する仕組みとなっている
(年休取得率、制度の利用状況 、残業時間削減率 等)

□ワーク・ライフバランスの取り組みについて、管理職のマネジメントスキル向上に対する研修を毎年定期的に実施している
□柔軟な働き方ができるよう、就業場所に関する勤務制度を導入しており、全従業員に周知している
 (テレワーク制度、員本人が勤務地を選択できる制度、勤務地限定職種への転換制度 等)
□柔軟な働き方ができるよう、就業時間に関する勤務制度を導入しており、全従業員に周知している
 (フレックスタイム制度、始業・終業時刻の繰上げ、繰下げ、時間外労働免除、制限(法律で規定されている以上、短時間勤務制度(法律で規定されている以上の1日/週/月の所定労働時間の短縮制度) 等)
□各種休業制度の利用者以外に過度な負担がかからないために、休業取得者が出ても対応できるような取り組みを実施している
 (複数担当制 、業務マニュアルの作成、休業取得者の代替要員の確保、復職前後の研修、サポート面談 等)

 

4_人材育成
働く従業員と企業の関係を対等ととらえ、お互いが同じ方向に向かって成長するための取り組みを行い組織力の強化をしている。

【取り組み具体例】
□キャリアマップ(組織図、階層、職種、スキルの要件)が定義され、全従業員に周知している
□会社が大切にする価値観(バリュー)について、活躍できる社員の考え方を習得させるための研修を 毎年定期的に実施している
□階層別、役割別に必要に応じて年間の研修プランを立案し、実施している
□評価制度を運用しており、評価結果に対してフィードバックの機会と目標設定の機会を設けている
□従業員の意欲ややりがい(エンゲージメント)について、社内アンケート、サーベイなどで従業員の声や意見に対応する取り組みを毎年定期的に実施している

 

5_健康経営
従業員の健康を重要な経営資源として捉えて、個人の健康増進を企業の業績向上に繋げるための施策を取り入れている。

【取り組み具体例】
□健康経営に関する取り組みの方針資料(コーポレートサイトでの発表も可)を作成し社内外に発信している ・取り組んでいる目的 ・取り組みの目標 ・取り組み計画 ・取り組みの実施内容
□健康経営推進のために会社から任命された担当が存在し、全従業員に周知している
( 部署に役割として明示、取り組みの推進担当やプロジェクトチームの設立 等)
□健康経営の取り組みについて、社内アンケートや従業員の意識調査を実施している
□健康経営の取り組みについて、研修を毎年定期的に実施している
(食生活改善研修、健康経営マネジメント 、意識向上のための研修 等)
□治療と仕事の両立支援についての制度を導入し、全従業員に周知している
(基本方針の表明と労働者への周知、研修による両立支援に関する意識啓発、両立支援に関する制度・体制等の整備、治療と仕事の両立に関する相談窓口の設置 等)
□健診結果についての保健指導(特定保健指導)を適切に従業員が受診できるような社内体制を整えている
(受診勧奨のため対象者に個人宛通知の実施、再検査、精密検査、治療に要する時間の出勤認定や特別休暇認定付与の制度実施、再検査、精密検査、治療の費用補助(金額の一部補助も可)の制度実施、再検査、精密検査、治療の従業員に対して受診報告の義務化の制度実施 等)

 

6_ダイバーシティ&インクルージョン
全ての従業員がそれぞれの特色/個性/経験等を活かし、活躍できる会社を目指して多様な人材の活躍支援をおこなっている。

【取り組み具体例】
□ダイバーシティ&インクルージョンに関する取り組みの方針資料(コーポレートサイトでの発表も可)を 作成し社内外に発信している ・取り組んでいる目的 ・取り組みの目標 ・取り組み計画 ・取り組みの実施内容
□ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みについて、社内アンケートや従業員の意識調査を実施している
□ダイバーシティ&インクルージョンについて、研修を毎年定期的に実施している

(ダイバーシティマネジメント・女性活躍推進・多様性理解促進・LGBT・障がい者理解の研修 ・外国籍社員受け入れ研修 等□評価制度を運用しており、評価結果に対してフィードバックの機会と目標設定の機会を設けている)
□より幅広い人材が活躍できるよう、女性登用のための取り組みを実施している

(・女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定及び周知、短時間正社員制度など多様なキャリアの実績、女性社員の働き方アンケートの実施 、女性の管理職比率目標の設定 等)

 

7_リスクマネジメント
経営を行っていく上で障壁となるリスク及び、リスクが及ぼす影響について事前に対策し、危機発生の回避をするとともに、危機発生時の損失を極小化するための取り組みを行っている。

【取り組み具体例】
□情報セキュリティに関する方針や規定を定め、全従業員に周知している
□情報セキュリティ方針に関する理解のための教育(入社時、定期社員教育、部門会議)を実施している
□労働安全衛生に関する方針や規定を定め、全従業員に周知している
□労働安全衛生に関する方針の理解のための教育(入社時、定期社員教育、部門会議)を実施している
□緊急事態発生時に従業員の安全や健康を確保するための災害対応計画(待機方法、勤務外の連絡手段、緊急時対応人員の確 保、避難や初期救急などの訓練方法を定めたもの)を作成している

 

8_労働法遵守
従業員が安心して安全に働くことができ企業活動を円滑に行うために、労働に関する法律の内容を正しく理解し遵守している。

【取り組み具体例】
□就業規則、雇用契約書、各種協定関係書類等を法定通りに作成しており、 就業規則は従業員がいつでも閲覧できるように周知している
□雇用保険/社会保険を加入要件を把握しており、法定基準を満たした運用がされている
□労働時間、残業時間は実態通りに把握および管理できている(サービス残業等が発生していない) また支払うべき残業代は法定基準を満たしたものとなっている
□過去1年間において、従業員(短時間正社員を除く)1人当たりの各月毎の法定時間外労働及び法定休日労働の合計時間数が 全て45時間未満である
□変形労働制・フレックス制度・短時間勤務等、柔軟な働き方に対する制度を導入している場合、 就業規則での規定や労使協定の締結等の制度の法的導入要件を満たしている

 

自社がホワイト企業かどうか客観的に評価してくれる認定組織「ホワイト企業認定」

「実際に取り組んではみたものの、どこまで取り組めているかわからない」
「頑張って取り組んでいるから、ホワイト企業であることを第三者に評価してもらいたい」
といった場合には、「ホワイト企業認定」制度を展開する一般財団法人 日本次世代企業普及機構(通称:ホワイト財団)を活用してみましょう!

 

(ホワイト企業認定審査:https://jws-japan.or.jp/web_shinsa/)

まとめ

今後日本が直面する「少子高齢化に伴う労働力の減少」「介護や育児など働くスタイルの多様化」などに対応するために、企業はいち早くホワイト企業となるべく、従業員が働きがいを高く保ち、能力を存分に発揮できる環境を作ることが、重要な課題になります。
また、就職活動においても、ホワイト企業を見極める視点を持ち、自身のライフステージに合わせて働くことが出来る会社を見つけてください!