【社労士監修】雇用調整助成金の『休業手当率』の決定方法を解説

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練または出向を行い、労働者の雇用の維持を図った場合に、休業手当・賃金などの一部を助成する雇用調整助成金について、「要件が次々変わってわかりづらい」や、自力で申請したら「問い合わせ窓口が混雑して全然確認できない!」と思う方も多いのではないでしょうか。

また申請するにあたり、休業中の従業員を補償する休業手当率の決定をしなくてはなりませんが、厚生労働省のQ&Aには「労働者がより安心して休暇を取得できる体制を整えていただくためには、就業規則等により企業において、100分の60を超えて(例えば100分の100)を支払うことを定めていただくことが望ましい」と記載されています。実際何割にしたらよいのでしょうか?

また、この数か月間で雇用調整助成金の拡充が度々進められ、現在は、休業手当を60%を超えて支給した場合も、 4月8日以降の休業については上限の助成額1人1日当たり8,330円(※上限額変更の可能性あり)以内であれば、その部分に係る助成率は100%になり、会社が負担する金額(労働者に支払う休業手当と会社が受け取る助成金の差額)は0になります。(参考:厚労省HP「雇用調整助成金の更なる拡充について」)

今回は5月19日時点で厚生労働省から公表されている内容をもとに、特に迷われる事が多い『休業手当率』の決定方法について解説します!

 

雇用調整助成金とは

雇用調整助成金とは、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業を行い、労働者の雇用の維持を図った場合に、休業手当、賃金等の一部を助成するものです。

対象労働者

雇用関係があり、休業させる全労働者。
緊急特例期間(4/1~6/30)は、特例で雇用保険に加入していないパート・アルバイト(学生含む)労働者も対象と、それらは緊急雇用安定助成金という新たな助成金で対応されることとなりました。

支給対象企業

以下の項目にすべて当てはまる場合、支給対象となります。

※緊急雇用安定助成金の申請のみの場合は、労働保険が成立していれば、支給対象となります。

 

休業手当率とは

休業手当率とは、新型コロナウイルスの影響による休業が生じた場合に、過去に支払った賃金額をもとにして目安となる賃金を決め、そこから休業中に補償する割合のことを指します。
冒頭でもご案内しましたが、厚生労働省のQ&Aには「労働者がより安心して休暇を取得できる体制を整えていただくためには、就業規則等により企業において、100分の60を超えて(例えば100分の100)を支払うことを定めていただくことが望ましい」と記載されています。
助成金の要件として60%以上が支給要件となりますので最低は60%、上限は100%として、休業手当率として設定することになります。

平均賃金から算出する助成額

休業手当率の計算は、平均賃金の何割を補償することになるのかにより変動します。
参考として平均賃金額の算出方法は、以下の通りです。

平均賃金=
前年度1年間の雇用保険の保険料の算定基礎となる賃金総額 ÷ 前年度1年間の1か月平均の雇用保険被保険者数 ÷ 前年度の年間所定労働日数

よく勘違いされやすい点として、助成金の額は、上の計算式から求められる平均賃金額に休業手当の支払率(60%~100%)と、助成率をかけて算定します。
休業する従業員それぞれの休業手当ではなく、平均賃金額で計算するというところが混乱しやすい点です。

【助成額算出の簡素化について】
平均賃金額を用いた助成額の算定方法について難しいとの意見があったため、5月19日に申請手続などを簡素化したと公表がありました。小規模の事業主(概ね従業員20人以下)について「実際の休業手当額」を用いて、助成額を算定。小規模の事業主以外の事業主についても「平均賃金額」の算定方法が大幅に簡素化されました。
参考:雇用調整助成金の手続を大幅に簡素化します(厚労省HP)

休業手当率の変化による雇用調整の助成額を比較

ここでは、2パターンの条件と休業手当率を元にした計算式により、助成金額を比較してみましょう。

 

例①
【条件】

・労働者10名が5日間休業
・事業所の平均賃金:15,000円
・休業手当率:100%
・助成率は、中小企業区分(雇用維持要件達成)90%
【計算式】
➀事業所の平均賃金『15,000円』×➁休業手当率『100%』× ③助成率『90%』=13,500円
上記13,500円になりますが、上限額が8,330円の為、一人当たりの助成額は8,330円となり、助成金の受給総額は、8,330円×10名×5日=【416,500円】
例①の条件に対する会社支給、助成金額
⑴実際に会社が支払う休業手当額:15000円/日
⑵助成金で支払われる額:8,330円/日

 

例②
【条件】

・労働者10名が5日間休業
・事業所の平均賃金:15,000円
・休業手当率:60%
・助成率は、中小企業区分(雇用維持要件達成)90%
【計算式】
➀事業所の平均賃金『15,000』×➁休業手当率『60%』×③助成率『90%』=8,100円
今回は上限額の8,330円に抵触しないので、一人当たりの助成額は8,100円となり、助成金の受給総額は、8,100円×10名×5日=【405,000円】
例②の条件に対する会社支給、助成金額
⑴実際に会社が支払う休業手当:9,000円/日
⑵助成金でもらえる額:8,100円/日

上記の計算結果から、助成金が支給された場合の会社負担額は、
例➀の条件の場合、【6,670円/日】(⑴15,000円 - ⑵8,330円)、
例➁の条件の場合、【900円/日】(⑴9,000円 - ⑵8,100円)となります。

例➀の条件のように、従業員に100%支払ってあげると、従業員の満足度は高くなるかもしれませんが、助成額には上限があるので、助成金で補填できる金額が少なくなり、会社負担が大きくなります。

対して、条件➁のように従業員に最低限の60%を支払った場合、従業員の満足度は得られづらいですが、助成金で補填できる金額が大きくなり、会社負担が少なくなります。

このように、休業手当率は助成金額に大きな影響を与えるのです。

「従業員へ支払う休業手当率」と「会社負担額」のバランスは、雇用調整助成金の「平均賃金」の何%を支給するのかという考えよりも、所定賃金(通常に支払っている賃金)の何%を支給するかと考える方が分かりやすいので、次項の図「休業手当率のパターン別 メリットデメリット」を併せてご確認ください。

 

休業手当率(補償割合)の設定方法の手順とメリットデメリット

それでは実際に、休業手当率を決める手順を確認しましょう。また、決定にあたり、割合別のメリットデメリットについても把握しておきましょう。

休業手当率(補償割合)の設定方法の手順

①対象者ごとに支給率を分けるかどうか決める(役職者、一般職、パート・アルバイト等)
②除外が許可された以外の手当は原則支給するものとし、通常の賃金の何割を支払うか決める
③上記事項を会社の資金的余裕や収益性、労働者の生活や離職バランスといった観点から再検討する
④決定した補償割合においての助成金額を計算する

休業手当率のパターン別 メリットデメリット

上図のメリット、デメリットを考慮して、自社での最適な休業手当率を決定しましょう。

 

休業手当率を決める際によくある質問

正社員は100%、パートは60%など、 雇用形態によって休業手当率を分けることはできますか?

【答え】
可能です。ただし、助成金の受給額の計算では低い方の割合で計算されます。(正社員100%、パート60%であれば、助成金の受給額は60%で計算される事になります)

判定期間ごとに、休業手当の率を変更することは可能ですか?

【答え】
可能です。休業率や休業内容が変われば、その都度、休業協定書の締結をしてください。
労働者代表は、変更になっていない限り、初回の休業協定締結時の代表で問題ありません。

休業手当を支払う際には 「平均賃金」を使うのではないのですか?

【答え】
可能ですが、暦日の平均賃金の算出は労働者にとってもわかりづらく、給与計算においても煩雑であるため、所定労働日数での平均賃金の算出方法をおすすめしています。

基本給は100%支払い、他の手当(役職手当など)は60%支払う予定です。 助成金の計算では、どちらの支給率で計算されますか?

【答え】
60%です。助成金の受給額の計算では、低い方の支給率で計算されます。

それでも休業手当率の決定に悩まれる場合

上記のご案内を自社に落とし込んでみても、休業手当率の決定にに悩まれる場合には、社労士に相談しましょう。弊財団の認定コンサルタントは、社労士として休業についての対応だけではなく、その後、会社稼働後も「次世代に残すべき素晴らしい企業=ホワイト企業」になるべく、コンサルティングサポートをすることが可能です!

拡充や要件緩和が重なり制度理解に時間がかかりますが、初期に比べて申請の負担は軽減されたり、以前は対象ではなかった方も要件変更で支給対象の可能性がありますが、諦めず雇用調整助成金の活用をご検討ください!

 

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