従業員エンゲージメントとは?向上させる5つの施策と課題発見へ導く3つの計測ポイント

2000年以降、欧米企業で定着したエンゲージメントの概念は日本にも広がりはじめましたが、終身雇用の文化が色濃い当時の日本では、エンゲージメントの高低にかかわらず1社に勤めあげることが美徳とされてなかなか定着しませんでした。

しかし近年、働き方改革や健康経営、組織力強化といった様々な観点から、企業が成長する力、あるいは発展する力を向上させるために、従業員エンゲージメントを高めようとする動きが、人事領域で非常に活発化しています。

本稿では、従業員エンゲージメントとは何か、5つの向上施策と測定をして課題発見へ導く3つのポイントをご紹介します。

 

人事領域における「エンゲージメント」の意味

「エンゲージメント」という言葉は、企業やブランド、商品やサービスへの愛着を表す言葉です。
「顧客エンゲージメント」とは、お客様がどれだけ自社製品やサービスに愛着や思い入れを持ってくれているかを測る指標として活用されます。

一方「従業員エンゲージメント」は、従業員が現在働いている会社に対して、向かっている方向性に共感し、自発的に貢献したいと思う意欲のことを指します。

従業員のエンゲージメントが高い時、従業員は職場環境や労働条件に満足しているだけでなく、仕事にやりがいを感じ、意欲を持って取り組むことができています。

従業員満足度(ES)、ロイヤリティ、コミットメント、モチベーションとの違い

従業員エンゲージメントを正しく理解するために、混同しがちな用語との相違点を明確にしておきましょう。

  • 従業員満足度(ES)

従業員エンゲージメントが、企業理念への共感や自発的な貢献を意味するのに対して、従業員満足度は居心地の良さに重きが置かれています。福利厚生や労働環境などを企業努力によって改善・改良していき、従業員がその取組みに対して評価し、満足していたらモチベーションが上がったりエンゲージメントに繋がったりするものですが、必ずしも企業の業績に結びつくものではないので注意が必要です。

  • ロイヤリティ

ロイヤリティは「忠誠心」のことで、従業員だけではなく顧客に対しても使用されている用語です。日本では伝統的に企業が従業員に対して圧倒的な力を持っていたため、ロイヤリティが重視される傾向にありました。ロイヤリティの高さが企業への貢献につながる場合もありますが、企業と従業員は明確な主従関係になるため、従業員自身の判断力や想像力が育たず、指示待ち人材になってしまう、といったネガティブな結果を招く可能性もあります。

  • コミットメント

コミットメント(=commitment)には、「委託」や「約束」「責任」といった意味があります。人事領域におけるコミットメントは、企業が従業員に対して目標や行動などを設定し、従業員がそれに応えている(承認している)状態をいいます。

目標や責任感を持って仕事をする点においては、コミットメントもエンゲージメント も同じです。大きな違いは、自らの意思をもっているかです。
コミットメントは会社が従業員に対して与える約束であるのに対し、従業員エンゲージメントは自発的に企業への貢献のために行動するという事です。

  • モチベーション

従業員のモチベーションは、従業員自身の心理状態を指します。対して、従業員エンゲージメントは従業員と企業との間の関係性を表します。

 

従業員エンゲージメントが高いと得られる4つのメリット

従業員エンゲージメント向上施策を実行するメリットは何でしょうか?具体的な効果を4つ紹介します。

①モチベーションの向上

従業員エンゲージメントが高い場合、前向きなモチベーションが強く発揮されている状態であり、与えられた業務をこなすのではなく、自発的に仕事を見出し、積極的に取り組んでいく効果が期待できます。また、エンゲージメントサーベイで従業員のコンディションをキャッチアップできるため、定期的な実施でコンディションの変化を察知でき、急にスコアが悪くなった場合にも、1on1や面談など適切なフォロー対策を実施する事でモチベーションの維持向上が期待できます。

②会社の業績向上

もっとも大きなメリットのひとつとして、従業員エンゲージメントが高い企業は、業績が向上します。世界各国でコンサルティングを手掛けるタワーズワトソン(『Global Workforce Study』)によると、従業員エンゲージメントが高い企業と低い企業では営業利益率に約1.5倍の差が見られる、という調査結果が得られています。

③従業員が企業理念に共感しているため、会社の雰囲気が良くなる

従業員エンゲージメントの高い組織では、一緒に働く同僚たちへの信頼感も高い傾向にあります。
自分のことだけを考えるのではなく、助け合って仕事へと取り組む雰囲気が醸成されるため、会社全体の成果という高い視点から物事をとらえて会社へ貢献できる従業員が育つことが期待できます。

④離職率が下がる

従業員エンゲージメントの向上は人材定着にも影響を及ぼします。アメリカコンサルティング会社CEB社調べによると「エンゲージメントの高い従業員は、エンゲージメントの低い従業員と比較すると離職率が87%も低い」という調査結果や、これを裏付けるような厚生労働省の調査結果(平成26年)として「仕事を辞めたい」と考えている人の割合が、「働きがいがある」と答えた人の中では1.6%だったのに対し、「働きがいがない」と答えた人の中では36.5%と約20倍も高かった調査もあります。

従業員エンゲージメントは、採用戦略においても看過できないものであるといえるでしょう。

 

従業員エンゲージメントを向上させる5つの施策

従業員エンゲージメントを向上させるには、以下の4つの施策が有効です。

⓵会社のビジョンや社会への価値を明確に語る

従業員エンゲージメントを高めるうえで、会社のミッション・ビジョン・バリューが作られているか、それを社内に浸透しているかはとても重要です。自分が担当する仕事が社会にどう貢献しているのか、どのような価値を提供できているのかが実感できるからです。

また、日頃ミッションをどのように意識しているか、ビジョンをいつ想起しているか、バリューはどのように普段の業務に落とし込んでいるか、各社員に言語化させることで、各々がミッション・ビジョン・バリューに沿った行動ができるようになります。そのために、直接対話する機会を設けることも有効です。

②社内のコミュニケーションを活性化させる

社内の同僚やチームメンバーなどと良好な関係を築くことも、従業員エンゲージメントを高めるうえで役に立ちます。社内で人とのつながりが感じられなくなり、コミュニケーション不全が起きると、会社への愛着心は低下してしまうので注意が必要です。このチームで協力し合いミッションを達成したい、貢献したいと思えるような人間関係作りが求められます。

現在はコロナ禍でなかなかコミュニケーションが取りづらい環境ではありますが、プロジェクトの実行を部門横断的な形に組んだり、オンラインでのランチ交流会やイベントを主催したりするなど、社内のコミュニケーションが活性化するような仕組みを実施しましょう。

③適切な人事評価とフィードバックを行う

従業員エンゲージメントを高めていくためには、従業員に「会社はきちんと自分のことを認めてくれている」「自分を正当に評価してくれている」という意識を持ってもらうことも必要です。
人間の心理で、誰かに必要とされていると感じると貢献したいという欲求を抱きます。そのために人事評価の仕組みを整えることは非常に重要です。マネージャーによっては、具体的なフィードバックなどが不十分になってしまうこともあるので、社内でマネージャー向けの評価面談の方法、フィードバックの仕方の研修を実施するなど注意しましょう。どのような指標で人事評価を行うのか社員にきちんと伝え、こまめに評価のフィードバックの機会を設けることが大切です。また、最近は従業員エンゲージメントを高めるという意味でも、OKRや1on1という取り組みを導入している企業が増えています。

なお、リモートワークを実施する企業向けの評価制度の課題と注意点については、「アフターコロナ時代、多様化する働き方における評価制度の課題と注意点とは?」の記事もぜひ参考にご覧ください。

④自社の社内制度や職場環境、取り組みを見直す

ただ単に福利厚生や職場環境を充実させても、それは社員満足度となり一方的な指標にとどまって従業員エンゲージメント向上に結びつけることは難しくなります。

しかし、ワークライフバランスをベースに、社員のニーズや働きやすさに合わせて制度や福利厚生、職場環境を改善していけば、モチベーションアップに繋がり、最終的にエンゲージメントの向上に結びつく場合があります。ワーク・ライフ・バランスは「やりがいや充実感を得ながら仕事での責任を果たすと共に、ライフイベントにあわせて多様な働き方が実現できる社会」を目指しており、エンゲージメントの向上に通じる考え方がベースにあるからです。

自社の制度や職場環境の現状を可視化させたい場合には、ホワイト企業認定の審査を受ける事も効果的です。
ホワイト企業認定審査は、ワークライフバランスについて10の設問を設けるほかに、ダイバーシティや人材育成など、働きやすい職場環境に必要な7項目を計70設問を設けて審査し、バランスよく取り組んでいる企業を「ホワイト企業」として認定しています。
自社の制度や取り組みがバランスよく設計できているかを可視化する事ができます。

ホワイト企業認定審査の7つの指標

⑤従業員エンゲージメントを定期的にサーベイする

従業員エンゲージメントは、一般的には目に見えづらく、分かりにくい概念です。従業員エンゲージメントを高めるための取り組みを実施しても、実際にどの施策が効果的だったのかを検証することが難しい傾向にあります。そこで、定期的に従業員エンゲージメントをサーベイすることで、数値として可視化され、改善へと取り組むことができます。また、サーベイは定期的に実施する、という事が大切で、どの程度取り組みが進んでいるのか、従業員の意識に変化が生まれているか、会社の状況を定点観測することができます。

 

従業員エンゲージメントを測定をし、課題発見するための3つのポイント

実際に従業員エンゲージメントを高めるには、従業員エンゲージメントを測定し、その結果から組織課題の発見をおこなう必要があります。

従業員エンゲージメントを測定する代表的な方法はサーベイです。
サーベイでは「仕事にやりがいを感じているか」「自分の会社を友人や知人にどのくらい勧めることができるか」など、従業員がどんな想いで働いているのか把握するためのアンケート調査を実施することで、その結果から課題を発見することができます。従業員エンゲージメントサーベイを実施する前には、必ず実施目的をきちんと周知しましょう。

⓵従業員エンゲージメントに影響を与え得る要素を列挙する

職場の課題を発見するための具体的な質問「社風」や「仕事のやりがい」、「成長」、「労働時間や職場環境」、「上司や同僚との人間関係」、「評価や報酬」など、従業員エンゲージメントに影響を与え得る要素を列挙します。

エンゲージメントスコアは、基本的に「他人へどの程度職場をおすすめしたいか」を基準に数段階で回答してもらいます。これにより、従業員エンゲージメントを改善するために何をすべきか、課題が明確になるのです。

②質問数を制限して回答負荷を下げる

質問数を増やしすぎて解答負荷をかけすぎないという点もサーベイ実施において大切です。設問数が多すぎると真剣に答えない人が出てきてしまいます。また、回答を分析するのも難しくなります。

③定期的な調査

前項でも述べましたが、従業員エンゲージメントを定期的にサーベイすることで、会社の状況を定点観測で改善が可視化できます。できれば年に3~4回、最低でも2回はサーベイを実施しましょう。

 

まとめ

コロナ禍で柔軟な働き方が浸透した今、従業員エンゲージメントは今後の組織作りにおいて重要な指標となります。
まずは会社の状況を可視化し、どの項目が低いか、さらにその項目が低い原因を特定した上で、最適な打ち手を実行する必要があります。組織に課題感がある企業は従業員エンゲージメントのサーベイを実施して向上に取り組むべきです。

 

 

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